大洗の暮らしと生業

 主人公は純朴な人々と次々と出会い、大洗の人々との交流に次第に心が解きほぐれてゆきます。深夜11時過ぎであるにもかかわらず画家は夫婦でともに起き出してきて、主人公をあたたかく迎え入れ夕食の残り物の魚と持ち寄った酒で、ささやかな宴がはじまるのです。

 主人公は潮騒に包まれた家で自然に寄り添った暮らしをしている夫婦に好感を感じます。そして、この老人が偽画家かどうかということはさておいて、老人画家が生涯を通じて亡びの予感を感じながらこの歳まで生きてきたのだろうと、気付くのです。

 そう思ったとき、雲間から美しい満月が現れます。そして、画家の家が凄まじい波の音に洗われている様子とともに物語は終わりますー。

井上靖「大洗の月」が教えてくれる、大洗の人(石井 盛志)より抜粋

大洗の文化の記録